はるか昔、ミクシーなるサービスにおいて「物がない部屋が好き」というコミュニティがあった。見た瞬間、That's it!!(※)となり、私はそこに飛びつき、毎日スレッドをじっくり眺めていた。当時、今でいうミニマリスト的な考えのもとでせっせと所有物を減らして、毎日黒い服ばかり着ていた。でもそんな人当然周りにいなかったから、インターネット上に同志を見つけて喜んでいたのであった。Dんしゃりやら、Kんまりのトキメキ布教前のお話。
あれから幾星霜、両者の暴力的活躍に言及するまでもなく。両者の思想は世界的に普及していって、国内に目を向ければ「ミニマリスト」を名乗るyoutuberがにょきにょき湧き出していて、少ないもので生きていくことのメリットが知れ渡り、すっかり定着してきた感じ。
でも私は、Dんしゃりのやましたさんの本もKんまりのトキメキ本も一応目を通したけど、とにかく気持ち悪くて最後まで読み通せてない。ミニマリスト界隈の人々もそうだけど、みんなだいたいスピリチュアルな表現が多くて耐えられんのよね。思想的な部分に踏み込んでくるというか。いや、先方はたかが整理整頓だの片付けなどとあなどるなかれ、根本的なものの考え方から変えていくことなんだから、思想に立ち入るのは当然だと言うのだろうけど、ぐいぐい来られるほど当方の拒否感もまた強まって、読書中に破談(なんの?)となるわけだ。
とはいえ片付け自体は好きだし技術向上もしたいしで、その界隈とは距離のあるなるべくスピってない片付け本を最近読んだら、凄く良かった。
”掃除や片付けをするには物を減らさないとだめだと思ってる人が多いが、必ずしもそうではない。片付けのルールさえ守っておれば綺麗は保てる。”
みたいな方向性でせめてて、確実にDんしゃりを意識してんな―と思いつつも、洗剤の使い分けとか実務的な内容が多くて安心して読めた。作者が掃除(≠片付け)のプロって背景もあるんだろう。「この本で伝えたことはあくまで自分の経験と視点からの話なので、皆にとって万能ではないだろうが、何か一つでも得られるものがあれば幸い」みたいなあとがきの謙虚さもまたよし。とにかく捨てなさいの人もときめくものを残しなさいの人もスピ臭に加えて、自己陶酔臭がすごいんだよな、「私のこの方法で片付ければ間違いないのよ!あたしについてきなさい!」みたいな。
まあつまりは、最近読んだ掃除本が良かったって話。
※下記動画の0:52あたりの”That's it”の口調で読んでください
V For Vendetta: You faced your death Evey. - YouTube